歯周病の治療

歯を失う原因の1位は歯周病

日本人の歯を失う原因の1位は歯周病です。むし歯とあわせると7割近くが歯周病とむし歯で歯を失っていますが、その傾向として40代後半からは歯周病で歯を失う方が多くなってきます。日本人の場合、30代以上では3人に2人が歯肉炎や歯周病などになっているといわれており、注意が必要です。

実は怖い病気です!「歯周病」

歯周病の怖さは、その影響が歯や歯茎・歯肉だけに止まることが無く、身体の他の部位に対して悪さをしたり、他の病気の引き金となる可能性があるということです。歯周病は、日常の丁寧なブラッシングやフロス/歯間ブラシによる歯間のケアによってその危険性を低下させることが可能です。より確実に歯周病予防を行うために、医院でのケアも定期的にお受けいただくことをお勧めします。

歯周病と全身の病の関係

肺炎 

口の中で増殖した歯周病菌が、気管や肺に入ってしまうと菌が原因となり気管支炎や肺炎を引き起こす可能性が考えられます。
誤嚥(ごえん)を起こす高齢者の方は、唾液が気管へと流れ、歯周病菌も気管へと運ばれてしまう危険性が高いです。寝たきりの高齢者の方は、特に気を付ける必要があり、口内を清潔に保つことができるよう小まめなケアが求められます。

早産/低体重児 

妊娠中のお母さんに特に気を付けて頂きたいのは、歯周病と早産や低体重児に相関関係があるのではないかと報告されている点です。つわりがひどく、口の中に歯ブラシを入れることもままならないという状況に陥る妊婦さんも稀にいらっしゃることや、妊娠性歯肉炎と言われるホルモンバランスの崩れから悪化してしまう口内の炎症など妊婦さんを取り巻く状況として歯周病リスクは通常以上に高いと言えるでしょう。妊娠する前から常にお口の健康を心がけていただくことで、より安心して妊娠・出産いただけることを知っていただければと思います。 

心筋梗塞 

慢性的に歯周病の炎症が起きていると、口内環境が正常な人と比較した場合に心臓疾患になってしまう可能性は1.8~3倍であるというデータもあります。
歯周病菌が血液を介して、全身に回ってしまい、心臓の筋肉へと酸素や栄養を送るための冠状血管へと到達してしまうと、血管を狭めたり、詰まらせたりといった悪さをする原因であるとみられています。たかだか歯の病気と、歯周病を甘く見ていると最悪の結果を招いてしまうこともあるということをよく理解しておきましょう。

歯周病セルフチェック項目

このような症状がある場合には歯周病が疑われます。手遅れになる前に、できるだけ早期に歯科医院を受診しましょう。

  • 口臭がある
  • 朝起きたら口の中がネバネバする
  • 歯みがきの時に出血がある
  • 歯肉が赤く腫れている
  • 歯が長くなった気がする
  • 歯肉を押すと血や膿が出る
  • 歯と歯の間に物が詰まりやすい
  • 歯が浮いたような感じがある
  • 歯並びに変化が起きてきた
  • 歯が揺れている

歯周病の原因 

口腔内にいる細菌は700種類にも及ぶといわれています。これらは基本的には常在菌で悪影響はないのですが、ハミガキが不十分であったり、砂糖の過剰摂取などによって、細菌がネバネバした物質を作り出し歯垢(プラーク)になります。

歯垢1mgの中には約10億個の細菌がいるといわれ、これらの細菌が歯周病につながります。歯垢は放置すると歯石になって余計に除去しづらくなります。

歯周病の進行

初期

健康な歯周組織では、歯と歯ぐきの間には1〜2mm程度のすき間があります。

歯垢(プラーク)放置することで歯ぐきに炎症が起き、2〜3mmのすき間ができます。

中等度

歯ぐきの炎症がひどくなり、歯周病菌が歯周組織に侵入していきます。歯槽骨や歯根膜も破壊されはじめ、少し歯がぐらつきはじめます。

重度

炎症が拡大し、歯槽骨も破壊が進み、歯がぐらつきます。進行につれて歯を支えられなくなっていきます。

歯周病の検査

検査

プロービング

歯周病検査で行う「プロービング」は、プローブという測定用の器具を使用して、歯と歯茎のすき間の入り口から底の部分までの距離を測定して歯周病の進行度合いの判定に用いるものです。目盛りのついたプローブを歯と歯肉のすき間に差し込み、全ての歯の周りの歯肉溝~歯周ポケットの深さを記録していきます。またその際に、同時に歯肉からの出血の有無、歯の動揺の度合いもチェックしていきます。

エックス線撮影

歯周病検査では、エックス線検査も行い、その画像でも歯槽骨の状態を調べます。歯槽骨の溶けてなくなった程度などについて正確に知ることが可能です。また、必要に応じてCT撮影も行います。

歯周病の治療

スケーリング(歯肉縁上の歯石除去)

歯周病治療で行う「スケーリング」は、歯にこびり付いている歯石をスケーラーと呼ばれる器具を使って除去する施術です。歯石には軽石のように小さな穴が無数に空いていて、そこに細菌が住み着き、繁殖して毒素を出すようになります。歯石の中の細菌は歯みがきなどでは取れないため歯石ごと除去が必要です。歯石は定期的に歯科医院で取り除く必要がありますが、併せて日常生活でのプラークコントロールも重要です。 

ルートプレーニング(歯肉縁下の歯石除去)

歯周病治療で行う「ルートプレーニング」とは、歯根表面の汚染されたり、軟化したセメントや象牙質を除去して、歯根の表面を滑沢に仕上げることをいいます。

歯根の表面をつるつるにすることによって、汚れの再付着が起こりにくい表面にします。 

歯周外科処置

歯肉縁下の歯石除去は手探りで行われるため、深い歯周ポケットや歯根の部分が複雑な形態などの場合、除去しきれない場合があります。

歯周外科手術(フラップ手術)では、歯茎を切開し、深い歯周ポケットに残存している歯石などを直接目で確認しながら除去していく外科的処置です。

歯周病の治療後 ~ 定期メインテナンス

歯周病の治療が終了した後も、3~6ヶ月ごとに、定期的な歯科医院の受診をお勧めします。歯周病は再発しやすいため、せっかく治療しても放置しては再発してしまいます。そのため、歯垢や歯石を、ご自身では取り切れない部分までしっかり除去し続けることがとても大切になるのです。

歯周病治療後は年に数回ですので、定期メインテナンスを受けましょう。